レガシーコードを前にしたとき、多くの開発者が感じるのは「技術的な問題」ではなく「恐れ」です。
古くないコードでも環境とのミスマッチが起こればレガシー化し、放置すればコスト・リスクは指数関数的に膨らみます。
この記事では、現場で頻発する「レガシーにまつわる5つの神話」を解説し、それぞれがどのように誤解され、どんな落とし穴を生むのかを明確にします。
読み終える頃には、「自分のプロジェクトはどの戦略を選ぶべきか」を判断できます。
レガシーコードが生まれる本当の理由
「古い=レガシー」ではない|本当の定義
レガシーコードは「年代」ではなく「ミスマッチ」によって生まれます。
気をつけたいのが、アマチュアほど道具にこだわります。
昨日の主流だった技術であっても、エコシステムやビジネス要件から取り残されればレガシー化します。
ミスマッチがレガシーを生む
チームのスキルセット、ビジネスの変化、外部ライブラリの進化。
これらがコードベースと噛み合わなくなると、保守コストは急上昇します。
神話1|「レガシー=古い技術」
「昨日の主流」でもレガシーになり得る理由
たとえば以下のようなケースは、古いどころか数年前の技術でもレガシー化します。
- 古いAngular(例:AngularJS)
- Reactのクラスコンポーネント大量使用
- Webpack 3 が「まだ動くから」と放置
放置したレガシーが引き起こすリスク
- セキュリティ問題(脆弱性が更新されない)
- パフォーマンス劣化
- 保守性低下で新機能の速度が落ちる
神話2|「レガシーは前任チームのせい」
レガシーは「意思決定の積み重ね」で生まれる
多くの場合、全ての物語を知る人はほとんど居ません。居たとしても確証バイアスで話している可能性があります。
プロジェクトが長期間凍結したり、当時のメンバーが抜けたり、ビジネス優先で技術負債が蓄積したりするのはよくある現実です。
背景理解が最初のステップ
非難ではなく「なぜこの状態になったか」を理解することが、改善への最短ルートです。
神話3|「移行はエンジニアの自己満足」
放置コストは「見えないだけで重い」
- セキュリティ事故の確率上昇
- 開発速度の鈍化(バグ修正や改修が毎回地雷撤去のようになる)
- メンテナンスコストの増大
移行は「投資」になる条件
リスク低減・開発スピード向上・組織の知識共有など、費用対効果が明確なら移行は利益を生む投資です。
神話4|「ビッグバンリライトは常に悪手」
ビッグバンリライトはひどい評判があるのは妥当で、サービスが大きくなればなるほどギャンブル要素が付き纏います。
むしろ最適なケースも存在する
アプリが小規模・非ミッションクリティカル・依存が少ない。
そんな条件では、ビッグバンリライトのほうがシンプルで速く安全に終わることがあります。
成功の条件
- スコープが明確
- 既存仕様が正確に把握できている
- 短期間で切り替えられる
神話5|「ストラングラーパターンだけが正解」
Stranglerは優秀だが万能ではない
メリットは大きいものの、以下のような隠れたデメリットがあります。
- 移行に時間がかかる
- 旧技術と新技術を並行して扱う負担
- 境界が複雑化しがち
ハイブリッド戦略という選択肢
ストラングラーパターンは道具であり、宗教ではありません。
大部分はStrangler、特定領域のみリライトなど、両者を組み合わせるケースは非常に多いです。
移行戦略の比較|Strangler vs Rewrite vs Hybrid
3つの戦略を軸で比較
- スピード
- リスク
- 必要なスキルセット
- ビジネス影響
- サービスの境界断面
すぐ使える|レガシー移行チェックリスト10項目
- アプリの規模は小さいか?
- 依存関係は明確か?
- 既存仕様は把握できているか?
- ビジネス制約は強いか?
- 移行中もリリースが必要か?
- 複数技術を併用できる体制か?
- 技術的負債はどの程度か?
- 短期的なリスク許容度は?
- リライトのスコープが明確か?
- 移行の成功基準を定義しているか?
まとめ
レガシーは「古い」のではなく「現状に合わなくなる」と言った方が正しいです。
失敗ではなく、もはやライフサイクルの一部です。
大切なのは、流行や神話に惑わされず、自分たちのプロジェクトに合った方法を冷静に選ぶことです。