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セキュリティ

CVE-2016-1000027 Spring Web / Java デシリアライズ問題をどう扱うべきか

2025年12月11日

Java/Spring を使っていると、SCA(ソフトウェア構成解析)ツールでCVE-2016-1000027が表示されて驚くことがあります。

とくに Spring Boot 2.x / Spring Framework 5.x 系を使っているとほぼ必ず検出されるため、

  • 本当に危険なの?
  • どう対策すればいいの?
  • Spring のバグなの?

と疑問に感じる方は多いでしょう。

ここでは、過度に不安を煽らず、かといって軽視もしないという立場で、CVE の背景と、実際の Spring アプリでの影響、そして現実的な判断方法を整理します。

1. この CVE は「Java デシリアライズ」が原因の問題

CVE-2016-1000027 は、Spring Framework に含まれていたHTTP Invokerという古いリモート呼び出し機能に関するものです。

HTTP Invoker は、JavaのObjectInputStreamを使って バイナリデータをデシリアライズしてオブジェクト化します。

Java の標準デシリアライズは歴史的に「信頼できないデータを読むと任意コード実行のおそれがある」という問題があり、HTTP Invoker もこの影響を受けます。

2. しかし、「攻撃が成立する条件」が非常に限定的

CVE が成立するには、次の条件が すべて必要です。

  1. アプリが Spring のHTTP Invokerを使っている
  2. そのエンドポイントが外部からアクセス可能
  3. 攻撃者が任意のバイナリデータを送れる
  4. Java デシリアライズが実行される

これは、現代のほとんどの Spring アプリでは当てはまりません。

  • REST や JSON を使っているアプリ
  • Spring Boot の標準構成
  • WebFlux ベースのアプリ
  • HTTP Invoker をそもそも使用していないサービス

これらは条件 1 の時点で不成立です。

つまり、一般的な Spring アプリでは「攻撃の糸口そのものが存在しない」というのが現実です。

3. Spring 公式の立場は「想定外の使い方による問題」

Spring チーム(旧 Pivotal / 現 VMware Tanzu)は、一貫して次のような立場を示しています。

  • Java の標準デシリアライズを信頼できない入力に対して使うのは想定外。
  • HTTP Invoker は“信頼できる環境の内部利用”が前提であり、外部公開するべきものではない。
  • そのため旧バージョンではフレームワーク側で挙動を変更する修正(パッチ)は提供しない。

つまりこれは「Spring のバグ」というより、Java シリアライズという仕組み自体の危険性に由来するものという位置づけです。

その結果、企業のセキュリティ部門や SCA ベンダーでも、以下のような扱いが一般的になっています:

  • HTTP Invoker を使っていない → 影響なし
  • 使用しているが社内閉域でのみ利用 → リスク受容
  • 外部に公開している → 要検討(利用そのものを見直す)

4. そして Spring Framework 6 でこの問題の機能自体が消えた

Spring Framework 6 / Spring Boot 3では、大規模な整理がありHTTP Invoker を含むレガシーな機能が削除・刷新されています。

そのため、6.x 系では構造的に問題が発生しない仕組みになっています。

つまり、

  • 5.x 系まで:HTTP Invoker が残っており、利用次第では影響する
  • 6.x 系以降:そもそも対象機能がないため、影響しない

という明確な境界があります。

5. 実務的な指針|最終的にどう判断すべきか?

STEP 1. HTTP Invoker を使っているか?

  • YES → 使い方を要確認(REST/JSON へ移行推奨)
  • NO → この CVE は実質的に無関係

STEP 2. 外部公開されているか?

  • 外部公開していれば要注意
  • 社内閉域なら問題の可能性はほぼゼロ

STEP 3. Spring のバージョン

  • 6.x 系なら完全に無関係
  • 5.x 系でも“使っていなければ影響なし”で問題ない

STEP 4. SCA ツールへの説明例

当社アプリケーションでは HTTP Invoker を使用していないため、CVE-2016-1000027 に該当しない。

Spring 公式の想定外利用に基づくため、実質的な影響なしとして処理する。

6. 結論|一般的な Spring アプリでは「脆弱性として成立しない」

CVEとしては形式上存在しているものの、現実の大半の Spring アプリでは次の理由から攻撃は成立しません。

  • HTTP Invoker を使っていない
  • バイナリ入力を受け取る経路がない
  • デフォルト構成に含まれない
  • 外部公開するような設計ではない
  • Spring 公式も「誤用」という立場
  • 最新バージョンでは問題機能が削除済み

そのため、「余程の特殊ケースを除けば、実質的な攻撃ポイントにはならない」という評価が現実的です。

  • この記事を書いた人

朝倉卍丸

シングルモルトスコッチなどのお土産を持ってきた人を助けるのが好きです。サービスの分割が重要ですが、昔ながらの方法でやりたいこともありますよね。

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